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万華鏡トワイライト

第1章 夕焼け空から

♪~♪♪~~

「……で、日が暮れて~~」

夕方、公民館のスピーカーから流れる電子音の『夕焼け小焼け』を聞いていると、子ども時代を思い出す。どこかへ遊びに行くときの約束事として「夕焼け小焼けが聞こえたら家に帰れ」と常に母から言われていた。もっとも、母のほうが帰りが遅いので少々遅れたところでほとんどバレないのだが。

今は…これが目覚まし代わり。夕方から起きて、支度をして、出勤する。23時まで営業のファミレスのキッチンスタッフ。

就職に失敗して、コンビニアルバイトもいろいろやらかして半年で辞めて、キッチンでの皿洗いならお客と接することもないし、と思って働き始めた。性に合っているのか、なんだかんだで5年続いている。

勤務は18時から0時まで。23時までの営業なのに0時まで勤務?と思った人は「片付け」という言葉を知らないのか。営業終了と同時に即帰れるわけではないのだ。店内清掃や営業中に使用した機器の洗浄など、店員は店を閉めたあとにもいろいろやることがあるのだ。これがいわゆる『閉店作業』

私の一日は、夕方から始まる…。
公民館からの『夕焼け小焼け』の放送を合図に起きて、その日の1食目の食事を摂る。起きて最初の食事だから「朝ごはん」なのか、食べてる時間が夕方だから「夕ごはん」なのか、言葉の定義に毎回ちょっと悩む。別に誰に聞かれるわけでもないけど。食べたら軽くシャワーを浴びて眠気を飛ばし、さっさと着替えたら家を出て仕事に向かう。始業時間の15分前ぐらいには職場について、制服に着替えてから時間までちょっと一息。ギリギリの時間に店に着いて慌ててシフトに入るより、早めに行って準備万端にしてから勤務時間になるまで休憩室でボケっとするのが好き。というか私のエネルギー源。憩いの時。
ちなみに、家から職場までは徒歩で10分かからないぐらい。私の行動範囲は、自宅から半径1キロ以内に全ておさまる。
仕事は、難しい作業は無いし、とにかく指示通りに淡々と動けばいいので楽だ。何より裏方オンリーで接客が無いのが良い。指示を出す側は考えることも多くて大変そう。私は基本、イエスマン…じゃなくて、なんていうんだっけ?指示待ち人間でいられる。それでいて時給は、夜間手当がつくのでそこそこ良い。

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