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万華鏡トワイライト

第1章 夕焼け空から

仕事が終わって、制服から私服に着替えて店の戸締まりも確認して職場を出るのは0時15分から20分。
別に私が戸締まりをするわけではない、ただのバイトだし。鍵も持ってないし。でも、ラストの退勤者は全員で一緒に店を出ないといけない、という防犯上の決まりがあり、社員さんが鍵を締めるのを見守ってから、駐車場で「お疲れ様でした」となる。同じタイミングで退勤する人間は、だいたい4〜5人いるが、帰る方向がバラバラだったり、車だったり自転車だったりと通勤手段も人によって違うので、基本、行きも帰りも一人だ。徒歩10分の距離とは言え、深夜の一人歩きは危ないので、小型懐中電灯と防犯ブザーは標準装備。ついでに反射材(襷がけ)も着用。反射材はちょっと恥ずかしいけど、歩道の街灯もまばらで暗い田舎の道で、闇に溶け込んでうっかり車に轢かれないためには必須だと思っている。ちなみに反射材を着けるのは、春から秋は帰り道のみ。日が落ちるのが早くなる冬の間だけ行きも帰りも装着。

今日も防犯ブザーを首からぶら下げ、反射材を襷掛けにして、懐中電灯をポケットに入れたら、リュックを背負って帰る。リュックの中身は制服とスマホとハンドタオルぐらい。滅多に入れてないけど、たまーに水筒、もしくはペットボトルの飲料。現金は持ち歩かなくてもスマホ決済という手段があるので特に困らない。自宅と職場の丁度中間地点ぐらいに、一軒だけコンビニがある。以前、半年だけ勤めて辞めたコンビニだが、辞めて5年も経つと、バイトの店員もほとんど入れ替わっているし、顔見知りはほぼいないので、通りすがりのフリ?をしてたまに買い物に寄っている。辞めてから2年ぐらいはなんとなく行き辛かったけど、今はもう平気。たまに新人バイトのたどたどしい接客を見て微笑ましく思ったりするけど、初々しかった新人さんが、3ヶ月も経たないうちに半年で辞めたあの頃の自分よりも遥かに手際良く、要領良く仕事をこなしてる姿を見かけると、自分は本当にコンビニが向いてなかったんだな、と軽く凹む。


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