テキストサイズ

担当とハプバーで

第7章 皮肉のパーティ


「茨城か都内か、あとは京都だっけ。それとも他に関係の浅いダチでもいんの?」
 冷たくなってく指先で鍵をつまむ。
 かちゃり、と音を立てて解錠した。
 顔見て、聞かなきゃ。
 開いた扉の向こうで、祥里は無表情。
「ねえ、なんで……」
「あ? ああ、位置情報? アプリだよ。前回送迎会とか言って遅かった日あったじゃん。あん時の凛音の様子がおかしかったから、監視アプリ入れてあんの」
「はあ? な、そんなのって」
「凛音も俺のこと監視していいよ。俺はなにも見られて困らないから。で、誰といたか言えよ」
 大丈夫。
 まだ、大丈夫。
「一時期、コルセンにいた同郷の人だよ」
「朝まで語るくらい仲良いんだ」
「そう……」
 早く終わらせたい。
 出勤時間が来ればいいのに。
「へえ、そう。わかった。携帯はもういいや。どうせトイレの中で編集したんだろ。服、脱いで」
 祥里が廊下の壁に背中でもたれる。
 私はトイレから出れないでいた。
「いま、なんて」
「服脱げ。やましいことないんだろ」
 な、なにを言ってるの。
 この人。
 返事の前に首を振る。
「絶対、やだ」
「はは、なんで? 凛音とシタの二ヶ月前だし、流石に蚊に刺された痕ならとやかく言わないよ。早く。仕事遅刻しちゃうだろ」
 もう一度扉を閉めて籠城しようか。
 ううん。
 祥里はこのモードになったら諦めない。
 こじ開けてでも脱がせに来る。
 大丈夫……大丈夫だよ。
 ハヤテは痕つけてないはず。
 あ、でも胸に爪痕ついてるかも。
 首は……赤くなってないかな。
 だめだ。
 脱げない。
 祥里は腕を組んでこちらを両目で観察してる。
「今更別れる選択肢はないと思ってたけど、凛音の浮気が原因とあっちゃ、互いの両親も悲しむな」
 どの口が。
 なんで。
 睨み返しても、祥里は動じない。
 ただ面倒臭そうに首を揺らした。
「自分で脱げないなら、俺がやるけど」
 一歩近づかれただけでブワッと全身が怯える。
「脱ぐ! 脱ぐから……」
 廊下の電気はついてない。
 開いたカーテンから入ってくる朝日だけ。
 これなら、相当濃い痕じゃないと気づかれないはず。
 ふうっと息を吐いて、まずはコートを脱ぐ。
 それからブラウスの片袖ずつ、腕を抜いていく。
 ばさりを頭から外し、床に落とす。
 キャミソールを。
 スカートを。
 昨夜と同じように。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ