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担当とハプバーで

第7章 皮肉のパーティ


 もう一つに手を伸ばすのを躊躇って、結局手を下げた。
 こちらは気に留めずに食べ進める。
 さっきより味がしない。
 なんでも話せる同僚枠か。
 惚れさせるとか言ったの覚えてねえのかな。
 まあ、遊びと思われたのはわかる。
 けど今のはかなりムカついた。
「わっかりやす。なに、昨夜寝たの?」
「そっちこそド直球じゃん」
「マジかよ……思ってたよりちょろいじゃん」
 一気に三分の一まで減ってしまったティーを見ながら口を外すと、ストローにも噛み跡が残る。
「待って……言ってないことまで鵜呑みにしないで」
「葉野さんほど分かりやすい女もいないし。無理」
「じゃあ、そう。そうだよ」
 ため息を吐いてスマホを取り出す。
 タタッと打ち込んでから、目当ての動画をミュートで再生して、テーブルに置いた。
「どれ?」
「ちょっ、やだ」
 最近三百万再生に近づきつつある、夜明けのジャックのコスプレ動画。
「ああ、これじゃ見分けつきづらいか」
 仕方ないので、次に再生数の多いシチュエーション動画を再生する。
「金髪? グラサン? ウルフ?」
「やめて……」
「もう一回再生する」
「ねえなにやってるかわかってる? 私が関係持った相手を特定しようとしてるんだよ」
「なにか悪い? その相談したくてカフェにしたんだろ」
 あくまでBGMに溶け込む声量で。
 ああ、結構楽しくなってきてる。
 追い込まれた相手ってこんな感じになるのか。
 それが七つも上の同僚ってところが。
 心をくすぐってくる。
「オレの予想だとねえ……葉野さん下に見られたいから、ガラ悪そうなこいつかなあ」
 ビンゴ。
 俯いて固まるなんて、頷くのと一緒。
「うわあ……これが遊び以外で誘うわけないじゃん」
「……わかってる」
「経験人数三桁とかいってそう」
「それはそっちでしょ……」
「オレはリアルに十三」
「とにかく、画面消して」
「あのさあ、いくら使ったの」
 もう食欲が失せたのか、カフェオレだけが進んでいく。
「月の……手取りくらい」
「なんだ。じゃあ絶対遊びじゃん。二回目はないだろ」
 え。
 嘘だろ。
 視線に自信がよぎった。
「あったのかよ」
「だから、聞いたの……流石にワンナイトで自惚れたりしないって」
「ソロならともかくさ、葉野さんレスでも婚約者いるだろ。やばくない?」
 言われなくてもわかってるだろうけど。

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