担当とハプバーで
第2章 危険な好奇心
「俺にとって人生の大正解って金貯めて優雅に過ごすだと思うんで。その夢叶えてくれる姫たちには尽くしていきたいすけど、野心求めてこられたら無理」
「具体的にいくら貯めたら辞めるの?」
面接官さながらのマサヤの質問に、うーんと唸りながら腕を組む。
「そっすね。八億とか」
「ほらね、やばいっしょ」
八億。
軽く言うけど生涯年収の四倍じゃん。
八年間で八億ってことは年収一億超えを目指すってことだよね。
それを入って翌月に宣言してるの。
やば。
「いやでもほら、二回バースデーイベントヘルプついたんすけど、あれ見てたら遠い夢でもないと思って」
「オレのじゃねえか」
ナオキのバースデーて、この頃からものすごかったのかな。
ナンバーワンなら一晩で五千万とか。
もっと上もありうる。
「いやまじ尊敬して。一秒単位でシャンパン開けられてったのが快感で。俺もすげえ飲んだけど記憶飛ばさないようにしがみつきましたもん」
「可愛げあるんだよね」
マサヤに頭を撫でられて、心底嫌そうに後ろに避ける。
そうかあ。
なおさらイベントになんて顔出せない。
たとえ期待されてないとしても、この人たちの一秒への気持ちの重さは桁が違う。
二十二歳。
最初の会社は一年で辞めた。
サビ残に、パワハラ。
次の会社も二年で辞めた。
高時給で縛りの少ない業種を探し続けて、やっと落ち着いたのがこの会社だもんなあ。
強制参加の飲みもなく、有給も取りやすい。
生涯働くかと言われたらわからないけど、あと五年は安泰な気がする。
でも待って。
三十歳でFIREしたいって言ったよね。
それも物価の高いハワイで。
見ている世界が違う。
でも死に物狂いだったんだろうなあ。
だって自分と飲みたくて大金支払う女性をたくさん抱えるまでの努力って、想像もつかない。
他の動画で枕についても語っていた。
一年目だけやっていたと。
でも枕をした客はほとんど二年目までついて来ず、いわゆる食えるのかを試されただけだと。
エグい記憶だろうにスラスラと。
今はやってない、が嘘かわからないけれどなんとなくホッとしてしまった。
お金のために女性を抱いてるなんて考えたくもない。
昼休みが終わり、席に戻る。
そうだ、金曜の件を有岡に聞かないと。
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