担当とハプバーで
第2章 危険な好奇心
金曜日って何を企画するの、と。
すぐに返信が送られてきた。
ー全部オレに任してくださいー
違うんじゃい、と。
話を聞いてなかったとまではいえずに、どう返信しようか悩む。
しかし、すぐに電話の通知ランプが光り、仕事に切り替えた。
午後も対応が多く、次第に有岡に送ったメッセージのことは忘れていった。
早く定時になれと願いつつ、話の通じないマイクの向こうの他人に辛抱強く言葉を投げる。
もう辞めよう、明日辞めようと思いつつ、イレギュラーの報告書を作成する。
首を回して、整体に最後に行ったのはいつだっかか思い返していると、遠くで学校のチャイムが鳴り響いた。
定時の合図だ。
なんて名前の学校かも分からないけれど、救いの音だから大好き。
手早く荷物をまとめて、祥里から連絡が入ってないか確認してから席を立つ。
すると、有岡がちょいちょい、と手招いた。
「なに」
「肉と魚どっち派?」
「魚かな」
「おっけい。おつかれしたー」
「なになに、なんなの」
それさえ聞ければ問題ないとばかりに、ご機嫌にエレベーターに向かう背中を追いかける。
帰宅の人達に紛れても赤髪は目立つ。
列に並んでから、小声で尋ねた。
「お店選びしてるの?」
「そう。どうせなら葉野さんの好みのとこがいいでしょー」
「そう、かもだけど」
「いーから。任せといてって」
そこで順番が来て乗り込む。
隣をキープするのも大変な混雑に、自然と離れてしまった。
一階に着くと、人の群れに乗ってスタスタとエントランスゲートをくぐり、地下鉄の方へとさっさと行ってしまった。
なに。
飲み会だよね。
サシ飲み?
なにをオーケーしたんだろ。
ああもう、明日単刀直入に聞こう。
生返事しちゃったって。
駅に向かいながらため息を吐く。
もしサシ飲みだったら、断ろうかな。
祥里に言ったらどんな反応するかな。
ううん。
そもそも祥里だってどこの誰と飲んで毎日遅くなってるかなんて分からない。
こちらが気にするのも馬鹿らしい。
女性物の香水の香りをシャツに着けて帰宅なんて何回あったことか。
気にしてたらメンタルが持たない。
浮気の証拠までは無いけど。
されてたって気づけないよな、今のままだと。
ハタリ、と我が身を振り返る。
ホストに通ってたってバレてない。
笑っちゃう。