担当とハプバーで
第4章 明るく怪しい誘い
盗撮やハメ撮り防止のためだろうけど、外で手放すのはなかなか不安を煽る。
ロッカールームは私一人だけど、鍵がかかったのが六つほどあり、カーテンの向こうからは音楽と談笑の声が聞こえる。
ロッカーには禁止事項の張り紙があった。
互いのプライバシーに踏み込まないこと。
同意のない行為全ての禁止。
スタッフへの暴言、暴行などは即刻退室。
店外で接触しないこと。
目を通してからため息を吐いた。
一人になってから実感が続々と上がってくる。
なるべく淡々と進めてきたつもりだった。
ここまできたらもう引き返すわけにはいかない。
縁がなければそれまでの場所。
別に必ず性行為をしなくたっていい。
スタッフもその辺は手を回してくれるらしい。
すぐに帰ってもいいんだ。
大丈夫。
精一杯自分を励ましてから、ロッカーに鍵をかけた。
ここには衣服を着ただけの女性が一人。
身分を証明するものもない。
ライブハウスとはまた違う、非日常。
ああ、脳内で映像が踊る。
今日はアドレナリンが出てるはず。
最初はどんな人と会話するんだろう。
二重カーテンを抜けて、店内に入った。
そこはホームページで見た通りの内観だった。
古き良きバーの作りで、S字にカーブしたカウンターには丸イスが並んで、立ち話ができる洒落たテーブルも壁際に四つほど。
壁には紫と黄色の照明が雰囲気を作るように灯され、カウンターの両端におそらくプレイルームに続く扉がある。
使用中ランプが光っているのは片方だけ。
手首がピクつく。
緊張でこわばっているのかも。
バーの中の妙齢の女性スタッフがこちらに気づき、会釈をしてから空のグラスを持ち上げる。
誘われるようにそこに向かうと、部屋全体の客の人数が明らかになる。
カウンターに男性二人、女性一人、テーブルにそれぞれ男女が三組、スタッフと話す男性四人。
それだとロッカーの数に合わないから、プレイルームに女性が二人いるんだろうか。
年齢は大学生程度から還暦近い男性まで。
女性は同年代が多い気がする。
「ご利用は初めてですね。よろしければ飲みやすいシャンパンからいかがですか」
ハスキーな声のスタッフの案内に素直に従う。
三人組が興味を示したように視線を送ってきたので、グラスを受け取りながらそちらに近づいた。
「初めまして」