担当とハプバーで
第4章 明るく怪しい誘い
三人ともにこやかに迎えてくれた。
「どうも、こんばんは。私は常連なのでなんでも聞いてくださいね。二杯目はテキーラコークがオススメですよ」
「ジンさん、初心者に勧める酒じゃないだろ。あ、ここでは好きな名前になれますよ、お嬢さん。僕はことらです」
二人の男性は四十歳程度かな。
「それからこちらの美人は」
「ゆあです。私は二回目なの。緊張しているでしょうけど、何かあったらすぐにスタッフの方が助けてくれるから、安心してまずはおしゃべりを楽しみましょうね」
多分年下だろうけど、ゆるくカールした黒髪に、胸元の開いたカットソー、短めのタイトスカートにぴっちりしたタイツとハイヒールは、自分の見せ方を熟知しているようで。
すごい。
今日の自分なんてオレンジのブラウスに、黒のロングスカートで、とても地味に思えてくる。
ライブ終わりに直した化粧もよれてないか不安。
「ことらさんとジンさんは五年前から利用しているんですって。私どうしてもお二人の経験を知りたくて、今日はウズウズしてここに来たんです」
ジンは漁師のようなワイルドな雰囲気に、中背。
ことらは紳士的なスタイルで同じ目線くらいの小柄。
「ゆあちゃん、それ言ったら新人さん怖がっちゃう」
「いえ、ジンさん。私も色々聞きたいです。あ、えと、乙葉と申します」
「乙葉ちゃん。んー、可愛い名前。それで乙葉ちゃんはどうしてこんなバーに興味が湧いたのかな。我々はね、妻と別れたバツイチ同士でね、今が人生で一番男を満喫しているよ。ここはいろんな女性に会えるから」
バツイチ。
その響きにドキッとしてしまう。
結婚はしていないけれど、祥里と別れたらその肩書きに共感を覚えてしまう気がする。
「えと……」
「ジンさんて前回もいきなりこの質問してきたんですよ。答えづらいですよね。あのね、私は彼氏と別れたくて前回ここにきたんですよ。結局今日までに別れられなかったんですけど、秘密でこんなことしてるって思ったらなんだか急に彼がか弱い存在に見えちゃって」
「いつでも捨てられるって、こと?」
つい口に出てしまった言葉に、ゆあが眉を上げる。
それからキュルンと効果音が出そうな首の角度で、手を優しく合わせた。
「よくわかりますね、さすが。乙葉さんもパートナーだけじゃなくて他の選択肢もあるんだって安心感欲しくないですか」
邪悪な質問が飛んできた。