担当とハプバーで
第6章 墓まで連れ添う秘密たち
昼休みにいつも通りキッチンカーでホットドックを買い、フリースペースのベンチに腰掛ける。
なんとなく食欲が湧かなくて、温かい包み紙を太ももに乗せたまま動画サイトを開いた。
初めて知ったときのハヤテの動画を、お気に入りフォルダから選んで再生する。
姫に同伴を頼まれたとき。
何回見返したかわからない。
ーそんなに俺と一緒にいたいの……しょうがないなあ。じゃあ、エース目指してみよっかー
イヤホン越しに耳元で聞こえる声が、金曜日の声と重なって、ビリビリと腕の血管が痺れる。
ああ、これやばい。
全部の動画が劇薬だ。
ハヤテの声ひとつであの夜を思い出してしまう。
動画には出てこない下ろした髪にシャワーを当てたときも、決して見せない入れ墨の全貌も、最近の動画に対するネガティブな言葉も。
全てが貴重すぎた。
ああ、今夜新宿に駆けつけてしまいたい。
会いたい。
この思いはもうファンだけじゃない。
だから、絶対に会っちゃいけない。
手に入るはずないんだから。
気まぐれに人生を振り回されちゃいけない。
だって相手は可能性に満ちた二十五歳。
結婚なんて考えちゃいない。
これから五年はホストを続けていく。
家族にも友達にも言えるわけない。
ホストにガチ恋なんて、誰にも言えない。
でも神様ずるすぎる。
なんであんな時間を与えたの。
もし三十分ずれてたら、きっと出会うことはなかったはずなのに。
私がさっさとルームに入ってたら、すれ違ってたに決まってるのに。
なんで、あの数分を、きっかけを。
ループされる動画を止めて、ホットドッグにかぶりついて咀嚼した。
イヤマフに響く音が嫌で、一旦外す。
誰かが駆けてくる音がして顔を上げると、有岡が息を切らして現れた。
「葉野さん、ちょっといい」
ああ、父親のことだ。
面倒ごとを生んでしまった。
こくりと頷くしかなく、有岡が疲れた足取りで隣に腰を下ろした。
肩が触れたので、少し腰をずらして離れる。
「あのさ、親父って、葉野さんに話しかけたわけ?」
大きくかじってしまったので、急いでモグモグと細かくしてからのみ下す。
「うん。最後列で、なんか渋い人がいるなって思ったら、KOJIの父だって」
「アイツ……」
憎しみがこもった呼び方に眉を顰める。
「応援に来たって言ってたけど」