月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜
第15章 大気圏
むせ返るコックピットの中、
コーエンは敵の機影が立ち去るのを待っていたが、いっこうに離れそうにない執拗な敵に恐怖を感じた
「やつら、なかなかこの岩塊を離れませんね」
「そう簡単に諦めてくれると楽なんだけどね、
それより見て、コーエン、地球よ」
コーエンがコックピット内に張り巡らせてある全周天モニターを見上げた
眼の前には今にも落ちてきそうな巨大な地球が浮かんでいた
コーエンがキャロラインのほうをチラリと見ると、彼女も笑顔で見上げている
彼女の瞳の中も、地球が映っているのが見える
まるで合成写真のように見える
出来過ぎだ
コーエンは思わず「…美しい」と口にしてしまった
キャロラインはそれを聞いてコーエンのほうの顔を覗く
キャロラインはてっきりコーエンが地球の感想を述べただけだと思っていたが、彼の視線は自分の方に向けられていた
「どうしたの? コーエンったら」
キャロラインはフフフと笑った
「もし、この戦争が終わったら……
帰る基地も、帰る場所も無くなったら……
ボクとどこか遠くへ、2人で遠くに行きませんか……??」
キャロラインは突然の告白に驚いた
コーエンはまだまだ子供だと思っていたし、
実際コーエンは裸の姿を見ても反応してこなかった
そんな彼が、何をきっかけに告白してきたのか、真相を知りたくなった
だがそれ以上に自分たちのバックボーンがすべて崩れ落ちてしまった不安感のほうが強かった
誰か、そばにいてほしい
一緒に暮らしていける場所がほしい
キャロラインはそんな不安を受け止めてくれるのは、今のわたしにはコーエンしか居ないと思った
派手な顔つき、派手な身体つきのキャロラインに群がるオトコどもはたくさん居る
でもこの少年は外見だけでなく、中身もまるごと包みこんで、そばに居てくれるかもしれない…
キャロラインはそっと声を発した
「コーエン、わたしロンデニオンに行ってみたいわ……
何でも地球の古い町並みを再現しているノスタルジックなコロニーだときくわ……
いちどそういう落ち着いたアンティークな街を覗いてみたい……」
「わかりました」
コーエンは快諾した