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月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜

第5章 委員会

明るい部屋


広い部屋の真ん中に申し訳程度の長机



こんなに広い空間にどうして真ん中にこじんまり配置したのだろうか


スコットの前には見知らぬ制服姿の年配の男性が数人構えている



「それでは委員会を開く」


皆が姿勢を正す


「スコット・イアン、この委員会は先日の悲しき事故災害を重きに捉えて開かれる

 ひとつは原因究明と、もうひとつはどのようにしたら未然に防ぐことが出来るのか、

 我々の質問に答えていただき、ご意見を聞かせて欲しい」



スコットは敬礼しながら、事故災害という言葉の選択に違和感を覚えた


未然に防ぐ?


一方的に襲われ、戦闘になったのに?


スコットにはこの委員会の意図が今ひとつ理解出来なかった


「…さて、起こってしまった過去は取り戻せない、だが未来は自分たちで変えることが出来る

 我々は大切な仲間を2人失ってしまった

 どうすれば彼女たちを失わずに済んだのだろうか?

 今後、注意しておくべき事例を見付け、同じような悲劇を招かないためには何をしたら良いのか、どう思われますか?」


委員会の司会を進行しているのはアナハイム社の人間らしい


その横には警察なのか、もしかしたら月面公安の人間かもしれない


さらにもうひとり、軍人らしい体格の男が目を閉じたまま参加している


「…意見と言いましても、自分らは一方的に攻撃され、被害を被った立場です

 なにもかも受動的行動であり、こちらに非があったようには思えません

 それは報告書や解析データでも明らかだと思われますが……」



アナハイム社の進行役がチラリと報告書を一瞥する


「不明の敵の機体だけでなく、味方機であるはずの僚機からも攻撃を受けたようだが、これは何か?」


「随伴機がコントロール不能になったと思いましたが、違うのですか?」


「あらかじめ決められた作戦コードを実行するのが随伴機だろう?訓練前に書き換えたような事は?」


「敵に囲まれた戦地でわざわざ味方機を陥れるような事をするわけがありません!」


「痴情のもつれという事もある

 現に周囲からはキミとヴァレンティア・ヴァレンティンは恋仲であったという声も聞く」


スコットは不躾な面談に苛立ちを隠せなかった


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