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月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜

第2章 複座タンデム機の訓練

「スコット!小惑星地帯を抜けたらスプートからエネルギーパックを受け取って」


「了解、バーリャ」


高機動型モビルスーツ〈ブリジニティ〉は小刻みな動きで岩石群を交わしていく


操縦系を任されているスコット・イアンは細やかな指の操作をする


コックピットシートに取り付けられた操作系は過去のグリップ型ではなく、球体になっている


球体そのものを動かして全体を操作をし、ボーリング球の穴のようなフィンガーキイでさらに細やかな動きを実現できる

従来のグリップ型よりも繊細な操作を必要とする球体型だが、スコットはそれをうまく使いこなしていた


スコットは横目でチラリとコックピットの上を見上げる


コックピットの天井は高く、二人乗りの複座式となっている

スコットの座るシートの上に相棒の女性ヴァレンティア・ヴァレンティンのシートが浮かぶ


一ヶ月間の〈ブリジニティ〉の訓練でバーリャ、スコッティの愛称で呼び合う仲になった


テスト機〈ブリジニティ〉は複座式であるだけでなくもう一つの特徴がある


それは随伴機とも言える無人機を伴うことだ


〈ブリジニティ〉双子座を意味するこの新型機は後方に無人機〈スプート〉衛星と呼ばれる機体を随伴させている


これにより2機での攻撃パターンが可能となり連携を取りながら作戦行動をとれる


おもに親機〈ブリジニティ〉をスコットが直接操縦を、

子機〈スプート〉はヴァレンティアが遠隔操作している


アナハイム・エレクトロニクス社のグラナダ工場で企画開発された新型機は月の表側フォン・ブラウン工場とは異なり連邦軍以外の受注生産を請け負っている


この新型機もジオニック系の意匠を受け継いだモビルスーツとなっていた


スコットはエネルギーパックを受け取るとビームライフルに挿し込んだ


「ちょうどエネルギー残数がギリギリだった」


「最初から使いすぎよ」


歳上の女性は若いスコットをたしなめた


「でも被弾はしてないよ、最初から飛ばしてきたおかげだ」


スコットも言い返した


“だから女と組むのはイヤだったんだ”


スコットは歯ぎしりをして後半の訓練に備えた


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