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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第9章 黒海海戦


看護チームとの話し合いもあり、クレアは数時間おきに短時間での調書をとることとなった

おもに医務室でのベッドの上で横たわったまま話すことが多かったが、ときおり食堂での簡易的な場も設けられたりもする


作戦司令のヨハネスが立ち会うとこもあればホーンキスト船長が加わったりもしていたが毎回参加するのはスティーブ・グリメットであり、特に彼は逃走劇そのものよりもカタストロフマシーン“ストーム”に関心が高かった


何回目かの調書をとっていたとき、食堂で談笑していたラーズを見つけた


「あっ!? あのときの…?」

「え? あぁ、アンタか、どうだい調子は?」

ラーズはリラックスしながら会釈したのだが、クレアは隣に座っている少女ローズに目を奪われていた


「……ほんとに…そっくりだわ、あなた本当にキアラじゃないの?」


「……まぁ、ローズと呼ばれるようになったのはこの船に乗り込んでからだけどね、もともと私たち姉妹に名前なんて無かったもの」


ローズはあまり気にもせず、手に持ったソフトドリンクのストローに口をつける


クレアに同行していたスティーブが親としてフォローした

「失礼、クレアさん!娘は少々変わっていましてね!改めて娘を守ってくれてありがとう!」


「お父さま、どちらかと言えば私がクレアを守ったんじゃない?
 まぁ、どうでもいいんだけど」


「そんなこと無いさ!あのときキミとラーズ君はゼントリックス軍に追い詰められていたんだから!」


ラーズも口添えする

「そうだぜ、ローズ? バルケシフの基地では本当にヤバかったんだから!せっかく鹵獲したドライセンもめちゃくちゃになったしな…」


「それはアンタがやったんじゃない!?」


クレアはふたりのやりとりを眺めながらスコットとキアラのことを思い出していた


あのふたりも文句を言いながらも仲が良かった


スティーブはクレアの暗くなった表情を察して声をかけた


「キミの言うキアラなんだが、コールドスリープされていたのは3つの遺体だったよ、残念だけど
 
 ひとりは彼女を撃ったネオ・ジオンの兵士、

 それとふたりのキアラだ」


結局3人で行動していたときのキアラも医療カプセルでは保たなかったのだろう

クレアは泣き崩れてしまった


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