クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第9章 黒海海戦
そして、レーダーにも映らない超小型のハイエナたちによって、あっという間に敵の小隊を示すシグナルは消え去ってしまった
そして警戒して近寄らなかった隊長機もどこかへ立ち去ってしまった
通常飛行に戻した〈ビーネンシュトック〉はどこか敵の部隊が残っていないか警戒しながら大周りに旋回するコースをとって母艦ゾーナタへ帰還したのだった
ジェニファーは「もう戦場は懲り懲り!生きた心地がしなかったわ!」と文句を言っていた
ガブリエラはスティーブに詳細なデータを共有して欲しかったが、さすがにスティーブ・グリメットは断っていた
カフェテリアでのんびり出来たのはラーズ、ローズ、そしてジョンの3人だけとなってしまう
「ジョンのほうが操縦センスあったわよ」
「そりゃそうだろ!本職なんだからッ!」
「いやぁ、ローズちゃんも初めての操縦とは思えなかったよ、ジムⅢで空中戦もこなしてしまうし、凄まじいよ!
どこで訓練を受けていたんだい?
いつからパイロットを?」
少し浮かれたジョンは矢継ぎ早に少女を質問攻めにした
ラーズも上手く乗りこなしていたつもりだったが、いい所を少女に見せ場を奪われて内心面白くなかった
それに気づいてか、少女はラーズの腕を絡めてきて、まるで慰めているようだった
「わたしたちは小さい頃から戦闘訓練だけを繰り返して育てられた戦闘人間よ
人間らしい暮らしも与えられなかったし、ときにはひどい扱いを受けてきたわ?
暴力、虐待、差別、当たり前のようにレイプもあったし、子供扱いじゃなくモノ扱いだったの
そんな酷いローカルな軍事施設の中から、今のお父さまが救ってくれたのよ
私が助けられたときにはすでにたくさんの姉妹たちが居た
その子たちの表情で、この人は暴力を振るわないのね、と思ったわ
姉妹たち全員がそんな誕生よ
わたしたちも大量生産の武器と同じ
あのコールドスリープの子たちもきっとわたしと同じ境遇なのね
それも何十年も前から眠っていただなんて、どれほど長い年月奉仕させられてきたのかしら?
生きている、て残酷よね?」
淡々と話す少女にジョンは何も言えなくなってしまった
少し寂しそうに話す少女を見て隣のラーズも肩をポンポンと叩き「オレもいるだろ」と無言で伝えていた
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