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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第9章 黒海海戦


「このあたりでいいのかな?
 じゃあ、頼むよ?」

「了解、引き継ぎます」


ジョンが隣のシートに座る女の子の横顔を見ると少し笑っていた


「お父さま、シミュレーションのパターン通り1箇所に集めて〈子蜂〉を射出します!」


ローズがひとつのスイッチを入れると、ボンッ!と音がして機体の後方から白煙が上がった!


「えっ!?やられたの?いつ??」

ガブリエラが戸惑っていると隣のラーズが耳打ちする

「あれはダミーだ、敵を引き付けるんだ
 故障したように見えて油断して集まってくるだろ?」


「敵を集めてどうすんのよッ!?」


月面で逃亡生活が染み付いていたガブリエラは理解できない


「ヤツらは動く標的を見つければ、途端に安心するんだよ、それよりシートに思いっきり背を押し付けて肩のバーを握ってろ!?
 舌を噛むなよ?」


ラーズの予測通り、白煙を上げてスピードを弱めてやると敵の小隊は無防備に近付いてきた


「4機のうち、1機は引っ掛からないようだな、アイツが隊長さんだな?
 おい、ローズ!そろそろバラ撒け!」


「言われなくっても、もうやってるわ!
 さぁ、行けッ!〈ビーネ〉たちッ!!」


わらわらわらっと後方から何かが射出された

それもひとつふたつではない

20 機ほどの小型のドローンのようなものが放たれていき、それはぐるんとカーブしては親機であるビーネンシュトックの後をくっついてきた!


「なに、アレ!?かわいいッ!!」


無邪気にジェニファーが声を上げる


順番に放物線を描きながら皆が親に付いてくる様はまるでカルガモの親子のようだ


小さすぎて敵に察知されないサイズだ


3機が一斉に威嚇射撃をしながら近付いてきた
その瞬間!!


「行くわよッッッ!!!」


ローズはグリップを思いっきり引いて
スロットルを全開にした!


すると真上を向いた機体が一気にロケットのように打ち上がる!


ドドドドドーーーーー!!!!!


爆音とともにあたりに波しぶき、
そして水蒸気爆発のような熱波が押し寄せた


3機は慌てて旋回し、おのおのが回避行動にとる瞬間、

〈ビーネ〉の群れが彼らに襲いかかってきた!


子蜂というより

ハイエナだ!


レーダーにも映らない超小型の支援機がそれそれの判断で敵を認識し、攻撃を開始する




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