クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第10章 ムーンブレイド
【妖艶の将軍、リジー・メジー】
ラーズたちの乗る新型機〈ビーネンシュトック〉に遭遇した敵の小隊
それは五大将軍のひとり、リジー・メジー率いる〈ステンドグラス隊〉の一翼であった
しかも唯一生き残った隊長機こそ部隊長リジーであったのだ
そもそも将軍自ら探索哨戒に出ることすら異例だ
部隊をいくつかに分けて、陸と海にエリアを広げ、バルケシル基地から奪われた〈ストーム〉の逃走経路を絞っている最中であった
そのうちのひとつの小隊に将軍リジーが加わったのは偶然かもしれないし、リジーが引き寄せた幸運であったのかもしれない
小隊は探索中に認識コード不明の単独機を発見、目的のカタストロフマシーンではなかったが、偶然にも試験飛行中の〈ビーネンシュトック〉とその特殊兵器〈ビーネ〉を確認することが出来た
残念だったのはリジーが小隊に加わったことにより、普段は慎重派であった小隊が将軍の前で無理に張り切ってしまい、警戒心を緩ませてしまったことだろう
リジーが同行していなければ、きっと小隊はヘタに手出しはせず遠方からの詳細なデータだけを本部に送り届けるだけで済んでいたであろう
“わたしが居たことにより、アイツを舞い上がらさせてしまったな……”
けっこう若いお気に入りの小隊長だっただけに、失ってしまったことはショックだった
“せっかく小隊長に昇任させてやったから昨夜は可愛がってやったのにッ!
それが裏目に出てしまったのね”
リジーの迫力ある巨体を若い士官は頑張って抱いていた
その健気で若々しいセックスが、彼のこれからの期待をこめた昇任祝いの夜だったのに、とリジーは残念がるのだった
発見時、こちらの部隊に気付いてなさそうな雰囲気ではあったが、突然の白煙がリジーに不信感を抱かせたのだが若い士官はそれをチャンスだと勘違いしたのだろう
一歩引いていたリジーは敵の妙な攻撃を受けなくて済み、なおかつその攻撃方法を映像で記録出来たことだけが戦果であろう
3機の小隊を瞬時に失い、リジーはその爆発に乗じて旋回し緊急離脱することが出来たのだった
将軍リジーはおのれの不甲斐なさ、部下の喪失、新情報の入手、本来の目標物の未接触、と総合的に考えてもイライラする結果に終わってしまった
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