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時給制ラヴァーズ

第4章 4.センターラインを越えて



「ん……?」

 意識が戻ったのは、どれくらい経った後だろうか。
 たぶん時間的にはそんなに経っていないはず。ただ頭がぼんやりしてよく考えられない。

「あれ? えーっと……」
「ごめん藤堂!」

 なんでこんな頭がぼやぼやしてるんだろうと寝返りを打とうとしたら、突然大きな声で謝られた。
 びっくりしてまだはっきりしていない頭を巡らすと、ベッドの端の方に慶人が座っていた。

「本当にごめん。俺……」
「慶人? なに急に藤堂って。えっと……なんだっけ」

 見たことないくらい肩を落として落ち込んでいるというか、それこそ泣きそうな顔で俺を見ている慶人はなんか変だ。
 それに「藤堂」だなんて、最初の時しか呼んだことなかったのに。
 普段は恋人っぽく「天」って呼ぶようにしてるから、急に距離が出来たみたいで違和感を覚える。
 ……距離? 違和感?

 あれ、なんか思い出しちゃいけないことがあった気がする。
 今みたいにごめんって、慶人が謝って、それで。

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