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時給制ラヴァーズ

第4章 4.センターラインを越えて

「…………え」

 起き上がって考え込もうとした瞬間に感じた下半身の違和感。慶人のベッド。下に置いてある段ボール。ごめんと謝る慶人の切羽詰まった声。それが一気に頭の中で繋がって、信じられない現実にうろたえる。

「ちょ、ちょっと待って、え、俺たち」

 あの時、押し込められるように入ってきたのは、無機物でもなく、指でもなく、熱を持ったそれ。
 なにより、俺は見てるじゃないか。慶人の、熱のこもった瞳と険しい表情。途切れ途切れだけど、慶人が動くたびびりびりと痺れるような快感が走って、もうダメだって思って……。

「え、あれ? マジでした、の?」

 恋人のふりどころか、マジでしちゃったってこと?
 酔いも相まってよく覚えていないけど、総合するとそういうことになる。そんなはずないのに。
 恋人同士なのはあくまで「ふり」だけで、人としての好意はあっても恋愛感情も欲も抱いたことなかったのに。
 いや、いやいや。少し考えよう。なにか、勘違いしてるんじゃないだろうか。

「待ってね。俺ちょっと記憶が飛んでて。これってつまり……事故ったってこと?」
「……本当に申し訳ない。バイト代はちゃんと払うから、この関係を解消したいならすぐに」

 小さく頷いて、というかうなだれて、慶人が弱々しい声でなんか言ってるから、とりあえずきちんと体を起こした。

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