『ミニチュア・ガーデン』第6章「喪失した道」　103ページ

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ミニチュア・ガーデン

第6章喪失した道

「おはよう。すぐに何か作るか？」
　フェイクは苦労など見せずに穏やかに微笑む。
　この頃のガルクとフェイクは、見た目こそほぼ一緒と言えたのだが、口を開き、言葉を交わすとその違いが露呈する。
「いや、食事はいらない」
　ガルクは、フェイクを見ながら彼を思い出しながら答える。
「食べなくて大丈夫か？」
　フェイクは当たり前にそう尋ねる。夜遊びばかりしているガルクを心配しているのだ。
「大丈夫だ」
　ガルクは答えフェイクは、そうか、と頷いて部屋に戻る。扉を閉めなかったのは、ラークにガルクの存在を慣れさせようとしての行動である。
「一緒にいるから、大丈夫だよ。誰も君を攻撃してこないから」
　怖がるラークに、フェイクはそう声をかける。返事らしい物が聞こえた気がするが、それは声と言うよりは音に近いもので、なんと言ったのか判別すら出来ない。
　開けられた扉から彼らの部屋の中を見ると、部屋の角で怯えて縮こまり、頭を抱えているラークと、隣に座って話しかけているフェイクの姿が浮いている。なぜフェイクが赤の他人な上に、酷い精神状態の彼を引き取って一緒に住もうと言い出したのか、今でもガルクは疑問に思うところだ。いや、何か大きな理由があった気がするが、忘れてしまったのだろう。