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ミニチュア・ガーデン

第6章 喪失した道

 温かいシャワーを浴び、シャンプーを手に取ろうとした時、鏡が目に入る。髪はスッキリと短く、まだラークからアドバイスを貰う前だと知る。そもそも、この頃の自分は人から怖いと言われる事を気にしていなかった気がする。見た目が怖いと言われようが、黙ってても寄ってくる女は多く、馴染みの店に行けば知った顔が集まる。遊ぶ分には全く支障がないのだ。
 体を洗いながら、ふと、その夜遊びを辞めたのがいつだったか、と記憶を探る。
 フェイクが死んでしまってからだと言うのは覚えている。だが、彼が死んだショックで辞めるとは思えない。その頃はまだラークは大切な人ではなかった。むしろ、居なくなってしまえば良いとすら思っていた。
 そうだ、家に戻るとラークが一人で怯えながら待っていたからだ、とガルクは思い出す。
 飲み仲間や女を連れて帰ると、調子の悪い時は襲って来て、それを恐れた人は来なくなり、ラークの現状を知った人が早く帰ろ、と言いだしたのだ。彼に暴力を振るったのは、その苛立ちもあった。
 彼のおかげで自分は変われた。それは生活態度が改善された、とか表面上だけではない。
 シャワーを止めると、フェイクがラークに話しかけているらしい声が聞こえ、そこに入って会話がしたい、と思ってしまう。だが、そうすればあの時の彼とは違ってしまう。今は、彼を拒絶していなくてはいけない。

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