テキストサイズ

ミニチュア・ガーデン

第6章 喪失した道

 髪から水気を拭き取り、バスタオルを片付けてリビングに戻る。
 フェイクは軽く何かを食べようとしているのか、キッチンに立ち、ラークはやはり怯えて部屋の隅に逃げてしまう。ガルクはそれらを気にしない様にしながらソファに座り、テレビをつける。地域密着型の情報バラエティは退屈で、全国ニュースでもないかと探す。その途中で天気予報を見つけ、なんとなくそれをかけてラークを見る。だが、今の彼は暑いと予想されても無反応だ。天気を気にする余裕もないのだ。
 ガルクは軽くため息を吐き、ドラマを見つけてそれを流し、テーブルの上にある新聞を広げる。
 相も変わらず、と言わざるを得ない記事ばかりで欠伸が出そうになる。政治家の汚職、不祥事、交通事故など、昨日も見た様なニュースしかない。
 ふと、何かが近づいて来た気配に振り向くと、ラークが怯えた目をしながらソファに手をかけていた。彼なりに慣れようとしているのだろう、とガルクは視線を向けただけで何もせず、見なかった事にする。
 スルリとやせ細った手が伸びて来て意味が解らないまま従うと、彼の唇が出迎えた。
 なにをーー。そう言って跳ね除けるのが正解である。だが、体を使うしか媚を売る方法を知らない彼との触れ合いでも、ガルクには嬉しかった。
 重なった唇が緊張と恐れに震えていると知っている。ガルク……いや、フェイクに捨てられたくないが為に同居人に気に入られようと、必死になっているだけだ。そろそろと恐る恐る口に舌を入れて扇情的に舐めて来るのも、そうすれば相手が喜ぶと思っているからであって、彼がそうしたいからではない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ