無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

　フェイクはガルクに睨みつけられてもあまり表情を変えず、おいで、と呼ぶ。
　フェイクが扉を開けると、だいぶ落ち着いた様子のラークがぼんやりとした表情でこちらを見ているのが見え、そばに行って抱き締めたい衝動に駆られる。が、グッと手を握って堪え、二人に背を向ける。
「勝手な想像で言うな」
　そう拒否するとフェイクは苦笑し、そうかい、と言って部屋から出て行った。
　ラークの隣に座ると、彼に買ってきた本を手渡して読ませる。自分はテレビをつけて見て、時折彼に話しかけた。
　そこに行きたい。一緒にそこに居て笑って話がしたい。でも、そうすればきっと彼は変わってしまう。それは防がなければいけない。
　ガルクは部屋に閉じこもり、正気を無くした彼を思い出し、自分を律する。もう、あんな姿は見たくはない。

　夕食になると、フェイクが頭を悩ませてラーク用のメニューを考えて用意をする。 ずっと食べられない事が多かった彼の胃は大量に食べられず、かと言って通常の食事では脂肪が増えないのだ。
　ガルクは一人だけ違うメニューである事に落ち着かないラークの様子を見ながら、食事を進める。ゆっくりと食べる様子は、あの時は嫌々食べている、と映ったが、改めて見えると喉が詰まって飲み込めないのだと気づく。酷く痛めつけられた肉体は魔法を使っても癒しきれず、深い傷跡や人工物で補っているのだ。