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ミニチュア・ガーデン

第6章 喪失した道

 食事が済むと、ラークは食器を片付ける。今日はあまり調子が良くないため、フェイクがそばにいて見守り、ガルクはソファに座ってテレビを眺める。
 その片付けが終わると、フェイクは蒸しタオルを用意し、ラークを連れて部屋に入る。全裸になるだけでもパニックを起こす事が度々あるので、タオルで体を拭く程度で済ませているのだ。それもフェイクが背中を拭こうとすると震えてしまうため、手出し出来ずに見ているだけだ。長い髪は流し台で洗うのだが、非常に長く本人も嫌がるため、毎日は洗えない。
 体を拭く様子はぎこちない。相手はフェイクと言えどあまり見せたくないので、縮こまっているせいだ。フェイクに声をかけられる程度には慣れているが、手を伸ばされると驚いてしまうので、一定の距離から近寄らない。
 よくこんな状態から、回復したよな、とガルクは思う。
 恋人となって生活を共にしていた時は、日常的に交わり、入浴も共に済ませる事も多かった。そこに至るまでとなると、この段階から二年から三年ほどだ。あの頃は回復して喜んでいたが、考えれば驚異的な回復である。
 早くその生活を営みたい、と思う一方、その前にはフェイクの死があり、ラークに深い傷を刻まなくてはいけない。
 フェイクがいて、ラークと深い関係になれる方法はないだろうか、と頭を過ぎり、それではこの状況を作った意味がないと頭を振る。
 ここにいる二人とも、ガルクが心の底から望んでいる二人とは別人だ。本人ではないのだ。今は誤魔化せているが、いずれ本物が恋しくなってしまう。そうなる前に、ラークがなぜ自殺と言う道を選んだのか、愛してはいないのにずっと好きだと遺書に書いたのか聞かなくてはいけない。

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