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ミニチュア・ガーデン

第1章 無

「ラークがそう言うなら、人を探すか?」
 彼の言う寂しさは、ガルクには理解できない。ガルクにとっては、彼以外の人間など有機物で出来たロボットと同じ意味なのだ。
 だが、彼が寂しいと感じるのならば、その方が良いと言うならば、毎日同じ事を繰り返すだけの人を創るなど造作もないので、どこにも行かない様に彼の手を握って歩きながら人を配置していく。
 観光名所であると示す様に、物珍しそうに周囲を見る観光客が増え、それを相手にする商売人の姿もチラホラと見れる。一般市民もその中を歩き、口々に発せられる多くの言葉で、潮騒と風の音しか聞こえなかった街にざわめきが生まれる。更に、道路に車を走らせると、本物の町の様になり、ラークは今までどこに居たのだろう? と不思議そうな顔をする。
「一気に人が増えたな」
 何も気づかずにそんな事を口にする彼に、自分がそうしたのだと知られたくなくて、ガルクは聞こえなかったふりをする。
 こんな事が出来るならば、自分が辛かった時に助けてくれなかったんだ? と問いかけられるのがガルクには辛すぎる。

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