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ミニチュア・ガーデン

第3章 空洞の城

 眠る事のないガルクにとって、夜は長く感じる。今の立場では、外の空気を吸いに行くにも人々の視線と言う鎖が手足に絡みつき、酷く重い。
 息苦しさから逃れようとため息を吐いても、胸の重みは一層の重量感を持って溜まり、気づけば涙が流れていた。
「ラーク、虚しいよ。俺も、死にたい……」
 布団を掴んで丸くなり、嗚咽を堪えて枕を濡らす。
 誰かにそばに居て欲しい。強く思うが、結局その誰かは彼でしかなく、それ以外は何の意味も持たない。

 日が昇り、時間が来て、ガルクは重たい体を引きずって身支度を整える。気を紛らわせようと創った世界なのだから、部屋に引きこもってばかりでは意味がない。
 顔を洗い、髭を剃り、髪をとかして服を着替える。いつも聞こえていたはずの天気予報の音声は聞こえず、ソファにだらけた格好で座っている彼の姿もない。
 一着数十万するスーツに身を包み、改めて髪を整えて、寝室から出る。朝から人が行き交う廊下は、静かながらも一定の活気があるのだが、所詮は有機物ロボットとしか感じないガルクにとってはただの物体だ。しきりに、挨拶らしい言葉が投げかけられている気がするが、ノイズか効果音にしか聞こえない。
「王様、本日のお食事は……」
「必要ない」
 そばまで来てかけられた言葉は最後まで聞く気になれず、一言で切り捨てる。声をかけた人物がどんな姿をしているのかも興味が持てない。

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