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ミニチュア・ガーデン

第3章 空洞の城

 これでは何も変わらない。何もない中にうずくまっているだけと何も変わらない。
 ガルクにその自覚はあるのだが、悲しみの靄に包まれた頭は常にハッキリせず、毎日来てくれた彼の目覚ましを求める。彼が呼んでくれればこの靄も晴れる。
「違う……違うんだ……」
 ガルクは喘ぐ様に呟く。
 彼のいない寂しさを紛らわせる為に作った世界にいて、彼を求めるのは間違っている。それこそ、本末転倒だ。
「王様?」
 気づけば廊下にへたり込んでいたガルクに、女性が気づいて声をかけ、逞しい背中を撫でる。
 顔を上げたガルクの目に映ったのは、サラリとした艶やかな赤毛だった。それから、細い顎が見え、薄い唇と高い鼻、切れ長の碧眼が見えた。
「……」
 ガルクは既視感に似た物に言葉を失う。
 部分的に見ると彼女はラークに似ているのだ。全体を見れば、彼にはあった影の部分がなく、彼女はあまり人を疑いそうにない物があり、印象はかなり違う。
「ご気分が優れないのですか? 今、人をお呼びーー」
 ガルクを心配する彼女の手を引き、腕の中に入れてしまう。
 華奢さではあまり変わりがない様に感じるが、やはり骨格が丸みを帯びており、何よりも柔らかく、女性の持つ特有の甘い香りがする。

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