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ミニチュア・ガーデン

第3章 空洞の城

 朝から議員の集会に出席し、会議に奮闘、定時会見をこなしてから、一時間程の休憩を挟み、二つの式典に出席し、町工場の視察、そしてまた議員集会に顔を出し、夜には会食。
 ここでのガルクの一日は分刻みスケジュールで忙しく、食事をゆっくり摂る事すら困難な状況だ。会食も時間はあるのだが、政治的な駆け引きをしなくてはいけないので、舌鼓を打つ余裕はない。好色として知られている為か、用意される女性を相手に肉欲を満たす事もあるが、それをすると見返りを求められるので、迂闊には手を出せない。
 休憩が無くとも、食事を摂れなくとも、性欲を発散させなくとも、ガルクにはあまり支障はなく、忙しくとも精力的に仕事をこなせるのは、彼のいない寂しさを紛らわせる為だった。

 だが、それも一人きりの部屋に戻るとふつりと途切れてしまう。
 しっかり防音される部屋は、外からの物音は殆ど聞こえず、それがまるで世界から隔離されたかのような錯覚に陥らせる。いや、それは錯覚ではない。
「ラーク……」
 思い出すのは結局、彼だった。
 静かな部屋に戻ると、彼の温もりを求めてしまう。彼の呼び声を期待して、彼の軽い足音を探してしまう。
 頭ではとっくの昔に理解している。だが、心がいつまでもそれを受け入れずに悲鳴を上げているだけなのだ。
 彼は死んでしまった。死を選ばせてしまった。自分は、置いて行かれた。それは理解しているのだ。

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