無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

　ラークがダラダラと言っているのをBGMに、ガルクは流し台の脇にある脱衣所の洗面台で顔を洗い、髭を剃り、髪を整える。
　リビングに戻ると、彼は変わり映えのしないニュースを退屈そうに眺めていた。そんな表情でも、ソファからずり落ちそうなだらけた格好でも、彼はどんな姿でも絵になり、彼を見る為に動きを止めてしまう。
　気配に気づいたか、彼の目が自分を捉え、時間が動き出す。
「ラークも顔を洗えよ？」
「解ったよ」
　ヘアバンドを置きに自室へと戻り、彼の重みのない足音を聞きながらキッチンへと向かう。冷蔵庫の中身もニュースの様に変わり映えしない。お互いに好き嫌いはさほどないのだが、似たようなものを買ってしまうのだ。よって、朝食も変わり映えのしない、いつものメニューだ。
　いつものフライパンを取り出して熱し、油を引く。そこに卵を二つ落として水を入れ、蓋を閉める。慣れたいつもの工程をこなし、その間にトースターにパンをセットする。何時の間にかラークがソファに戻ってテレビを眺めていると気づき、その後ろ姿を見ていると、わずかな焦げ臭さを感じ、迅速にフライパンを火から離して目玉焼きを皿に乗せる。少し焦げついたせいで黄身が潰れてしまったが、仕方ない。