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ミニチュア・ガーデン

第4章 幸せへの崩壊

 ガルクがハタと気づくと、王位を退いてから十年の年月が過ぎていた。
 ベッドの中には全裸のクウラが寝ており、すっかり弛んだ乳房を軽く揉んで起こすと、彼女はぼんやりとした目をガルクに向ける。
「おはよう」
 頬にキスをすると、クウラもキスを返した。
「おはようございます」
 そして、抱き合い軽く唇を重ねた。

 城は出されたが、豪邸に住み、使用人を雇っているので、朝食の準備などはガルクやクウラがやる必要はなく、適当な服を着てリビングに行くと温かい食事が出来ているのが、当たり前の生活。
 テーブルに置かれた新聞を手に取り、広げて朝食を口に運ぶ。クウラはいつもこの席にはいないが、とやかく言う事はしない。
 使用人達は何も言わずに次の準備、次の準備と整然と動き、ガルクにはいつもそれが滑稽に思えて仕方ない。この世の全ての物が有機物ロボットでしかない中で、この使用人達はそれの代表とも思える程に、毎日毎日同じ行動をとるのだ。しかも、あまりに無駄が少ない。
 トーストに齧りつきながら、目に止まった記事を読む。
 スプリーキラーが増えて来た世の中に現れた久方ぶりのシリアルキラーの記事だったのだ。

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