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ミニチュア・ガーデン

第4章 幸せへの崩壊

 腰を振って嬌声を上げる女と、彼に射精する男。代わる代わる、とって変わる様に繰り返されるそれらの行為に、彼は溺れるような苦しさしか感じていない。揺さぶられても、抵抗する気力もない。きりもみ状態で水の中に居るような、そんな感覚だ。
 異物を挿入され、顎を引かれればディープ・スロート。終われば顔面騎乗。全身は無数の手に蹂躙され、快感なのかくすぐったさなのか、不快感なのか解らない物に絶えず支配される。
 息をする事もままならない。自分がどんな体勢でいるかを認識も出来ない。ただただ、性的反応を求められて生理的な反応を示せば嘲笑か殴打を浴びた。

 これは、現実にされた事ではないのだろう。だが、彼にはこれが現実だと思う程に繰り返されたのだろう。だから、殺した一家とも性行為をした。それが当たり前だと思っているから。

「なぜ、うまれた、の……?」
 どこからか、彼の声が聞こえる。
 目に入った精液が酷く滲み、目を真っ赤にして涙を流せば、ゲラゲラと笑われる。その彼から聞こえたのではない。
「なんで、しねない、の?」
 汗と精液とローションに塗れて動けなくなった彼に、小便がかけられ、それでも反応が薄いと大便まで乗せられた。
「いきるのは、どう、して、こんなに……」
 道端に捨てられ、道ゆく足に踏みつけられる。
 屈辱と恥辱に死を切望しても訪れない。意識を失い、目を覚めせば同じ事を繰り返す、それだけが彼の現実。

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