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ミニチュア・ガーデン

第4章 幸せへの崩壊

 骨の形が判ってしまう程に痩せた頬を撫で、傷跡にキスをする。
「生きよう。ラーク。一緒に……」
 それは、正気を失うまでに至った彼には残酷な言葉だと知りつつ、ガルクは口にする。
 もしかすると、自分も正気を失っているのかも知れない。彼を失ってからあまりに長い時間が経過した。それでも、彼を忘れるどころか、彼に対する想いを募らせて張り裂けそうな痛みに涙を流し、何をしても忘れられないのだから。
 強い想いが狂気だと言うならば、彼に対する想いは正しく狂気だ、とガルクは思う。
「ラーク、愛してる」
 頬を撫でていた手は、深い傷の走る首を辿り、所々千切れた耳に触れる。彼が嫌がる様に、弱々しく首を振ったので、ガルクはそれ以上は触れない様にした。
 だが、彼を仰向けにして、起こさない様にそっと服を捲った。
「……っ!」
 ある程度想像はしていたガルクだが、その体は一瞬目を背けてしまった。
 肋が浮き出て、極端に腹部が凹んでいるのは、服の上から、覗く手足や顔の様子から判っていた。胸や腹部、腕や足に至るまで傷だらけである事も、首の深い傷を見て覚悟していた。皮膚病の跡や、酷いケロイドもあるだろうと想像していた。
 だが、下腹部や内もも、臀部に背中に刻まれた『FUCK ME』の文字やキルマーク、所有物であるとのマークであるタトゥーなどは想像していなかった。いや、もしかするとあるかも知れない、とは思ったが、こうもまざまざと残されているとは思っていなかった。
「……お前は、俺の物だ。もう、誰にも渡さない」

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