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ミニチュア・ガーデン

第5章 縋るもの

 食堂には、配膳係として数人の服役者が居た。彼らはガルクが王であった記憶が消され、看守でもなく、刑事でもなく、かと言って何かの係りでもない、ただそこにいる人、と言う認識をさせられている。突っかかって来る服役者がいないのは、彼の体格の良さと、自分達とかけ離れた高貴な雰囲気からである。それでも中には突っかかって来る者もいるが、ガルクに対抗出来るはずもないので、全く問題はない。
 トレイを所定の位置に置くと、奥の方で掃除をしている服役者に目が止まった。
 小柄で細身の、女顔の服役者だ。
 ガルクはフラフラと彼に近寄る。ここに来て数日。ラークの性欲を満たす事はあったが、自分の欲求を見たしていない事を思い出した。
 無造作に男の両手を掴み、壁に押し付ける。蹴りを繰り出そうとしている足は、踏みつけて黙らせた。
「何しやがる!」
 女顔で細身ではあるが、気は強いらしく、身動きが取れない状態になっても男は真っ向からガルクを睨み抵抗を試みる。
 この男の心も操作して黙らせようかと思ったが、その強い視線に嗜虐心がくすぐられ、このままで良いか、と不気味な笑みを浮かべた。
 細い手首はガルクの大きな手だと片手で押さえこめたため、左手で服を脱がせて試しに首筋を舐めてみる。すると、ビクンと反応しただけでなく、一瞬手の力が抜け、拒絶の声にも艶が混ざった。
「やっぱり、男が好きなんだろ? 」
 ククッと喉の奥で笑い、耳たぶを噛んでやる。その間、男は唇を噛み声を上げなかった。それは喘ぎを堪えているのだと言っているようなもので、ガルクには滑稽に映る。

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