
ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
納得がいった。
川名の動画は、女の非婚にネガティブで独善的な印象をこじつけていた。それは、かつて古い為政者達が少子化対策を講じていた頃よく耳にしていた誤謬に通じるもので、金さえあれば女と男はパートナーになり子供を作ると勘違いしていた彼らと同様、問題の動画は、非婚の女は男の愛を得られないから非婚なのだと揶揄していた。
生き方は、百人いれば百通りある。非婚の動機も人の数だけあって、母親にならない事情も多岐にわたる。
そしてえれんは、川名や長沼達のような人間に、親友の一人を殺されている。…………
「神倉さん」
愛津は、えれんの袖を掴む。
彼女は弱い。昔はもっと放っておけなかった、と織葉も話していた彼女は、傷付いても理想を守って、行動を起こしてきた強さがある。他人を否定せず救うことにがむしゃらな彼女は、川名達が否定という行為をやめれば、彼らのことも理解してやる器量を備えているだろう。そんな彼女が悲しい顔を見せなければいけない世界など、あってはいけない。
「覆しましょう。正しさなんて、ありません。自分達を正しいと思い込んでいる時点で、あの人達は、神倉さんに負けています」
「愛津ちゃん……」
何かに耐えかねたようにして、ふっ、とえれんが吹き出した。
「おかしいこと言いましたっ?!」
するとえれんは、切なくなるほど優しい目に愛津を映した。まるで血の繋がりのある妹でも見る眼差しだ。
「ううん。愛津ちゃん、逞しくって。最高に、誇らしい役員と思ったのよ」
