真夏の夜の夢
第3章 第二夜
次の瞬間、
紬は身の毛もよだつほどの恐ろしい声を耳にした。
『あんな奴より俺の方がよほど上手だよ』
スルスルとショーツが勝手に脱がされてゆく。
自分の意思ではなく脚が勝手に開かれてゆく。
逃げたいのに体の自由がきかない。
冷気に体が包まれてゆく。
まるで誰かに揉まれているように
乳房がぐにゅぐにゅと波打つ。
やがてとても冷たい氷柱(つらら)のようなペニスが
おま○こに突き刺さってきた。
『気持ちいいだろ?』
低い男の声が
部屋全体をビリビリと震わせるように響き渡った。
『お前を気に入ったから連れていってあげるよ』
ロープがさらに首を締め付けてきて
意識が薄れてゆく。
もうダメだと思った瞬間、
ドアが解錠されて悟が飛び込んできた。
「紬!!」
悟が叫ぶと首に巻き付いていたロープが弛み
冷たいベールに包まれた体が自由になった。
結局、紬はあの部屋を引き払った。
悟が「あの部屋は事故物件なんだろ?」と
仲介業者に詰め寄ったところ、
申し訳ございませんでした、
実はあの部屋は男がクローゼットで
首を吊った部屋なのだと白状してくれました。
「事故物件は告知する義務がありますよね?」
告訴も辞さないと紬が申し出ると
「事故後、一旦誰かが入居すると
申告義務が消滅するんです」と教えてくれた。
その後、紬は一人で寝るのが怖くなり、
悟と同棲することにしました。
あの部屋を出てからは
怖い現象もなくなったそうです。
いかがでしたでしょうか…
もうしばらくお話にお付き合いくださいましな
そう言って妖しく微笑むと
また一本、蝋燭を吹き消した。