真夏の夜の夢
第4章 第三夜
何度も何度も正太郎を呼び掛けていたが
朝日が昇るとどこかに消えてしまった。
二日目の夜も磯良の亡霊はやって来た。
今度は戸を叩く代わりに
家の壁をガリガリとかきむしり始めた。
「くわばら、くわばら…」
正太郎は恐ろしくて自慢のち○ぽも縮み上がり、
もう二度と女など抱くまいと誓った。
三日目の夜、ここを乗りきれば祟り(たたり)も収まる。
正太郎は一心不乱にお経を強く唱えた。
また、磯良はやって来た。
散々戸口を叩いたり引っ掻いた後に
さめざめと泣き始めた。
「こんなにもあなた様に
嫌われるとは思いませんでした
わかりました。
あなた様をあきらめてあの世に参ります
どうぞお幸せにお暮らしくださいませ」
そのような言葉を残したものだから
幸太郎のお経を唱える集中力が途切れた。
ふと、雨戸を見てみると、
微かな日差しが忍び込み
それと共に雀(すずめ)の軽快な鳴き声が
チュンチュンと聞こえてきた。
「やったぁ~~!
俺はとうとう三日間を耐えたのだ!」
正太郎は意気揚々と
玄関の戸をガラッと開けた。