DOLL(愛しきラブドール)
第7章 忍び寄る影
あれから毎晩、
俺は季実子さんとドールの貴美子を相手に
休む暇なく腰を振り続けた。
お陰ですっかりと贅肉が落ちて
スリムな体型になった。
こう書くと健康的にダイエットができて
一石二鳥と思われがちだが、
実際は顔色も悪く頬もげっそりしてきた。
そう、本音を言えば
精力を使いすぎてやつれてきているのだ。
「ねえ、たまには精のつく
焼き肉でも食べましょうよ
ほら、失業保険も入金されたことだしさ~♪」
俺の体を労ってくれているのか、
それとももっと愛の営みに精を出せというのか
季実子さんは焼き肉が食べたいと言い出した。
『月に一度ぐらい贅沢をしてもいいかな…』
俺と季実子さんは
焼き肉チェーン店の扉をくぐった。
だが、その店にはあの男が
先客として来店していたのを
俺たち二人は気づいていなかった。
安い肉だが食べ放題ということで
俺たちはこれでもかというほど
肉を腹に詰め込んだ。
よく食べ、よく笑い、
久しぶりの焼き肉を堪能した。
だが、そんな二人の様子を
俺たちのテーブルの死角から
あの男にじっと観察されていることに
全く気づかなかった。