マッチ売りの少女と死神さん
第6章 1月3日…あと刹那のその時まで
「どういたしまして」
ドアが閉まるタイミングで、サラの顔を上に向かせたホーリーは彼女に口付けていた。
「んン…ん……む」
「キスの時の、息の仕方…忘れたあ?」
唇を触れさせたまま彼が笑う。
忘れたわけじゃなく、ただ出来ないだけ。
白くて長いホーリーの首から胸元が視界に入って、サラの頭がクラクラした。
ホーリーの手のひらがふにっ、と衣服越しにサラの胸を優しく揉みほぐす。
「ん、んあ……っ。 いきなり、こ、困ります」
「いいねえ。 もっと僕で困ってよ」
(そうじゃなくて!)
今こんなことをしている場合ではないのだ。 考えることも話すこともたくさんあるし、ホーリーの体も心配で。
それなのに上から被さってくるキスは熱を帯びるばかり。
「……っ…ん、っん」
難なく胸先を見つけた爪先がカリカリそこを引っ掻いてサラの性感を引っ張り出そうとする。
昨日嫌というほど弄られたというのに、身を捩るサラの動きは逆に艶めかしく、それは傍目からしても、とても本気で抵抗している様子にはみえなかった。
「い、いや…」
「君がどう言おうがするよお。 今さら」
「そん」
軽々とサラを抱き上げる彼に街で見たような頼りなさはない。
ホーリーは激しい情欲を込めた瞳を真っ直ぐに彼女に向けていた。
「永遠なんか望まないって言わなかったあ? 僕はもしも今、サラちゃんを抱けないんなら、死んだ方がまし」
そんな彼にかける言葉などサラには思いつかなかった。
……サラもまたホーリーの首元に顔を埋めてきつくしがみついた。
遠からず来る、永遠の『さよなら』を、まるで掻き消すがごとく。