
マッチ売りの少女と死神さん
第6章 1月3日…あと刹那のその時まで
「まあね……僕が言うのも何だけどさ。 クラース氏はまごうことなき善人だね。 君をまた学校にも行かせてくれるだろう。 君のおばあさんからの最期のプレゼントってとこかな」
「ホーリーさんが他人に対して、そんな風に褒めるのを初めて聞きました」
「え、そこお?」
「サラさん? ああ、私には見えないお友達ですかな」
クラース氏がおもむろに椅子から立ち上がり、ホーリーがいるのと見当違いの方向に軽く会釈をする。
そんな彼をぽかんと見ていたサラとホーリーは一瞬の後に軽く笑いを漏らした。
「ふ……クラースさん、ホーリーさんはあっちです、ふふっ…」
「おや、私としたことが。 ええと、失礼。 ホーリー…ミスター?」
「グフッ、変なオッサンだねえ」
普段は辛辣なホーリーさえ和ませてしまう。
「ミスター、ですよね一応」
辛い過去を経てもなお、クラース氏とはその瞳と色と同じく陽光を身にまとったかのような人物である。
「では私は本日はこれで。 明日の昼まではおりますのでいつでも連絡を」
礼儀正しく握手をしてクラース氏を戸口で見送っていたサラが一瞬固まった。
「サラさん?」
ホーリーが後ろから緩くサラの体に両腕を回してきたからだ。
「い…っえ、何でも」
ぽぽぽと顔を赤らめるサラに、クラース氏が微笑んだ。
「ミスター・ホーリー。 お邪魔しましたな」
