マッチ売りの少女と死神さん
第7章 1月3日…ただ触れていたいから
とはいえサラは考えてしまう。
彼は抱けないのなら、生も放棄するとのたまった。
(死神って……本当に死ぬのかしら?)
そんな疑いさえ湧いてくる。
物も食べず睡眠も取らなくていいという便利な生態。
唯一ある性欲が旺盛過ぎて、妙な方向に向かうのも、仕方がないのかもしれない。
思考を巡らせながらサラが冷静に頷いているのには理由がある。
確かサラの記憶では、ホーリーは彼女をベッドに運びそのまますぐに事に及ぶかの流れだった。
真顔の彼につられるように呼応した、サラ自身も体が火照ったのは否めない。
だが今の彼は、サラを横抱きにしっかり抱きしめたままベッドから微動だにせずしない。
そして延々と彼女の首元に鼻先を埋めて、ハアハアとサラの匂いを嗅いだり毛先をちゅぱちゅぱ口に含んでいた。
「ホーリーさん……あの…さっきから何をしてるんですか」
どうやらホーリーは感傷的なものをベッドに持ち込む気はないらしい。 とサラは思った。
「恋人同士がこうしてロマンチックに愛を語らうのも前戯の一つだよねえ……いい匂い…♡美味しい♡」
(あ、相変わらず意味が分からないわ……)
彼のうっとりした声を背後で聞きながらサラは動けないでいた。
「恋人同士ではないですし、語らってませんし、これはロマンチックなのでしょうか」
「サラちゃん? ロマンティシズムとフェティシズムってさあ、生まれた思想の時期が大差無いだけあって、実は似て非なるものじゃないんだよお……昨晩サラちゃんが着てた服も、朝から僕、ずっとポケットに入れてたし」
彼が言う、前半の話は分からなかったが後半の言葉にサラが凍りつく。
(……え、あのペラペラヒラヒラスケスケを?)
「き、気持ち悪いことするの止めてください」
「サラちゃんってば、そんなにすぐしたかったのお?」
クスクスググという笑いにサラが脱力した声を返す。
「戸口で今すぐって言ったのはホーリーさんじゃないですか……」