マッチ売りの少女と死神さん
第7章 1月3日…ただ触れていたいから
サラは自分の体に回っていたホーリーの腕を退かし体を起こした。
「じゃあなあさら、帰らないと駄目です」
「は……? 君は、なかなかに残酷なことを言うねえ。 サラちゃんなら分かってくれるかと僕は思ってたんだけど」
目線だけを上にあげて言う、ホーリーは冷静な様子だった。
「残酷? わ、私……なら?」
その意味は理解できずも、咄嗟に彼の手を両手で握ったサラは必死だった。
自分のためにここに来たという彼がそうなるなんてあってはならない。
唯一、自分が彼のために出来ることだと思った。
「もしも、他の事情があるならごめんなさい。 だけど私はホーリーさんに生きていて欲しいんです」
ホーリーの口の端が歪む。
笑おうとして失敗した時に彼はこんな顔をする。
「……どうせ君からは見えないって」
「『見えない』と『死んでしまう』は違います!」
一瞬目を逸らそうとした彼にサラは強い口調で言った。
「違うんですよ、ホーリーさん」
消えるなんて言いたくなかった。
何よりも、家族を亡くしたサラは他人の死には敏感だった。
「私、毎日ホーリーさんのためにお祈りをしますから」
「僕は神様じゃないってば」
くすりと笑みをこぼした彼がまたどこか痛そうな顔をして黙り込む。
「私にとっては神様に近いものです」
サラは握っていた彼の手を自分の頬に押し付けた。