マッチ売りの少女と死神さん
第9章 1月3日…お別れの調ベ 後編
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ローラの部屋の隣にある、ベッドが備え付けられたゲストルーム。
『きっと疲れているのでしょう』氏はそう言ってサラにここを提供し、早めに休ませてくれようとした。
見渡すと、机やチェスト、ベッドがこじんまりと揃った小綺麗な部屋だ。
ホーリーは冥界からサラを見ることが出来ると言っていた。
(情けない私の姿を見られるわけにはいかないわ)
サラはもう二度と他人に涙を見せないと心に決めていた。
そして今後はこの家の家族になろうと決めた。
ホーリーが自分に贈ってくれた、いわば二度目の人生。
これから自分は、家のことはもちろん勉強もし、クラース氏とローラの役に立って生きるのだ。
(実家には……きっと、私は居ない方がいいわ)
そうしたらあの女の人は家から離れてくれる。
ひょっとしてお父さんも目を覚まし、元のように働いてくれるかもしれない、サラは寂しい気持ちで思った。
サラは出窓に向かい膝をついて両手を組んだ。
「ホーリーさん、私は幸せです。 貴方に心からの感謝と、そして安寧が訪れますように。 神様、彼にご加護をお与えください」
彼のために毎日祈ると約束した。
清潔そうなシーツの上に、この家らしい異国風のキルティングの布飾りが掛けられている。
サラはひと息ついて、ベッドシーツの隙間に潜り込んだ。
頭の先まで埋もれたサラは、自分の押し殺した嗚咽や震えを、どうかホーリーに気付かれませんようにと願った────彼への恋心も、家への想いも、まだ整理がつかずにいた。
ようようと深い闇と静けさが街を覆う時間になり、やっと彼女は眠りに落ちた。
……その夜、サラはホーリーが話してくれた、暗い冥界の夢をみた。