
マッチ売りの少女と死神さん
第10章 1月4日…死神さんに恋をしました
日が昇ってからしばらくして、サラは氏の家を一旦出ることにした。
前日の言葉どおり、今日は一人で実家へと向かうつもりだ。
「では、行ってきますね!」
『行ってきます』その言葉がサラは嬉しくもおもばゆく思う。
「……ローラちゃん?」
どことなく、ローラの落ち着きがないのにサラが気付いた。
「なんだか……昨晩の死神の言ったとおり、信心深いお姉ちゃんは、元々強い運を持っているわ。 亡くなった人の守護もあるみたいに思えるの……でも、言いづらいけれど」
「………?」
「今のお姉ちゃんにはまだ『彼』の匂いがとても強く残っているせいかしら。 周りが怖がって、近付けないみたい」
「ホーリーさんのことを言ってるなら、彼はとても良い人だし、私を助けてくれた恩人」
「そういう問題じゃあないわ。 異なる世界の生き物同士っていうのは、どうしても相容れないのよ。 たとえば、私たちが必要とする大気は、天使様にも死神にも毒なの。 だから彼らは彼らの世界で、互いに干渉せずに棲み分けているの」
「それは何となく、分かっているけど」
サラにはローラの言いたいことが計りかねた。
「だからね」
一歩前に進み出たローラは両手でサラの手を握る。
「くれぐれも、気を付けて欲しいの」
「……分かった」
どうやらローラは自分のことを心配してくれるているらしい。
サラは笑顔で彼女の手を握り返した。
そんな二人の様子を見守っていたクラース氏が声をかける。
「サラさん。 改めてお家にご挨拶に伺いますから」
「ちゃんと帰ってくるのよ! 晩御飯を用意して待ってるわ」
「……私がね」
戸口で笑い合い、二人は新しい家族となるサラを見送ってくれたのだった。
