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マッチ売りの少女と死神さん

第10章 1月4日…死神さんに恋をしました


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クラース氏は腰の怪我のため、大事をとって仕事を休み、二、三日家に滞在することになった。

「ローラちゃんのご機嫌がいいのはだからなの?」

今朝はローラと一緒にパンや卵を買いに行き、二人で市場を歩いていた。
早朝、まだ陽が昇りかけ空は少しばかり暗いが空気が澄んで気持ちがいい。

「あら、そんなことないわ。 怪我が長引いて、後々まで悪くしたら迷惑なのはこっちだもの。 男性ってほら、腰が命っていうじゃないの」

「そうなの。 うーん、重い物を持つから?」

「そうよ。 なんでも、腰の丈夫な方が、子供がたくさん生まれるらしいわ」

「そしたら私の腰はお父さん譲りなのね。 ローラちゃんは気を付けなきゃ」

二人は頷き合い

「お姉ちゃんの言うとおりね」

荷物を抱えて再び家の中へと入っていく。

クラース氏はミルクたっぷりのコーヒーを入れて待ってくれていた。

氏に新聞を手渡し、サラとローラは少しお喋りをしてから、キッチンに並んで朝食の準備をする。

「サラお姉ちゃんはとっても物知りだわ。 この辺りのお店のこともよく知ってるし」

「え…私なんか全然。 あ、ランチにパンケーキの生地を作っておいたので、焼いて下さいね」

「ああ、それはとっても助かります。 今から楽しみだ」

今日も穏やかなクラース氏。
サラはようやくいつもの調子を取り戻しつつあった。

朝食を取りながら

「ここのご家族の一員として私を迎えてもらえますか?」

養女となる申し入れを受けたサラに、二人は喜びに沸いた。

ローラが懐いてくれているのは分かっていたが、腰の痛みも忘れ、サラを天井に着きそうなほどかかえあげたクラース氏に、サラとローラは揃って目を丸くした。


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