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マッチ売りの少女と死神さん

第11章 1月4日…愛する君へ捧ぐ



日が落ちてもサラはクラース氏の元へ戻ってこなかった。

「無断で約束を違えるような子じゃないと思うんだが」

クラース氏は落ち着かずにいた。
郵便の者も訪ねて来ず、電話もない。
サラの実家へはここから徒歩で約三十分の距離である。
ローラの勧めもあり、氏は馬車を呼びサラの実家へ向かうことにした。

「ローラ、お前は家に居なさい。 入れ違いに言伝てがあるかもしれないから」

「……パパ、私も行くわ。 何かがおかしいの」

ローラの様子がいつもと違った。
表情は硬く、昼を過ぎた辺りから、段々と口数が減っていた。
クラース氏はそんな娘を不審に思いつつも、言いようの無い不安を覚えた。

彼は偶然にもサラと巡り合い、彼女をあの家庭環境から救うことを自分の使命のように思っていた。
うちに来てくれると言った時点で、サラは自分の娘も同然だ。
彼女の、あかぎれだらけの手に痩せっぽちの体。
あの歳で、何にでも一歩引いて遠慮をする癖がついている。
これからはあの子を伸び伸びと過ごさせてあげたい。 クラース氏はそう思っていた。

「パパ! 馬車が来たわ。 早く行きましょう」

結局、二人でサラの家へと向かうことにした。



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