
マッチ売りの少女と死神さん
第11章 1月4日…愛する君へ捧ぐ
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当然、この出来事を今は冥界にいる『彼』もその始終を観ていた。
「は………」
呼吸も忘れ、ホーリーは宝玉の前にへたり込んでいた。
何度も過去を巻き返し、最期の彼女を観た。
見たくなくとも、そうせずには居られなかった。
「僕は……何の…ために……」
彼は六度目の時を戻した。
家に帰り、サラを待っていたのはソフィアの嫌味の応酬、それから父親の怒声だった。
サラが彼らにとって見たことのない高級なコートを着ていて、これが最後だと、手元に残っていたお金を全て父親に渡した、それが大いなる誤解を産んだらしい。
サラが説明をしようとしたが、二人は彼女の話を聞いてくれないようだった。
だからサラは説明をする機会を辛抱強く待っていた。
『だらしない娘』『ふしだらな娘』『親不孝者』『怠け者』
彼らは彼女に言われのない、見えない称号を貼り付け、それはどんどん増えていき、サラは息苦しく感じていたようだった。
しまいにサラのコートを脱がせて取り上げようとしたソフィアに、彼女は始めて反抗した。
「これに触らないで! 貴女は汚いわ!!」
サラが口にした侮蔑の言葉だった。
「なぜ怒るの? 私は同じことを貴女に言われたわ」
だが怒りに身を震わせるソフィアに反し、サラは冷静だった。
「私はやっと私の尊厳を取り戻したの。 だから許せないことはきちんと言う」
誇り高く真っ直ぐに立つ、娘の姿に父親は怯んでいた。
まるでそこに義母の面影をみたかのように、父親は振り上げていた拳を下ろした。
