
マッチ売りの少女と死神さん
第11章 1月4日…愛する君へ捧ぐ
「なんでお姉ちゃん!?? なんで自分でこんなことをしたの!!!」
ローラは床に手を付きサラの顔を覗き込み、泣きながら彼女を叱りつけていた。
娘にはここであったことが分かるのだろう。
なぜサラを一人で行かせたのか。 自分がついていればと、氏は激しく悔やんだ。
娘を落ち着かせようとしたクラース氏は後ろからローラの肩に手を掛けた。
「パパ……ひどいわ、こんな…パパあああ!!」
泣きじゃくるローラを固く抱きしめる。
彼の位置から、サラの横顔が見えた。
左手に包丁を握り、傍には装飾の綺麗なナイフが落ちていた。
やり場のない怒りに震えた。
「あ…あんたは父親だろう!? サラさんが一体、何をしたというんだ……? あんたは今まで何を見てきたんだ!!」
魂の抜けたような彼女の父親は、クラース氏の非難に何の反応もしなかった。
……目を閉じたサラの死に顔は不思議と穏やかで、それはいっそ微笑んでいるかのようにみえた。
