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マッチ売りの少女と死神さん

第12章 エピローグ



今年も冬がやってきた。


じきに二十世紀を迎えようとするデンマークは先ごろの内戦以来、政治や産業の面で比較的落ち着いた時代にあたる。

「────そんなことがあって、僕は罰を受けたんだろうねえ。 ま、神を思いっ切り冒涜したわけだし。 単に死ぬと思ってたんだけど、結局三年も新人教育のためにタダ働きさせられてさあ」

「おい、いつもの与太話だよ。 ソイツ、頭がイカれてんだぜ。 元死神だとかナントカ。 おんなし話ばっかりしやがって」

しかし一方で、貧富の格差は激しく、彼らのように住む家を持たず飢えや寒さに苦しむものも多い。

街はずれの路地では、人目を避けるかのように五、六人の男達がたむろっていた。
その中の一人の名はアダム・ミュラーという元軍人で、もう八十を超える一番の年長者である。

「そりゃあ、イカれもするだろうさ。 目も見えねえし、両腕も無いんじゃなあ。 ワシも似たようなモンさね。 ホーリー、もっと火の傍にくるといい」

「あの時のリストに載ってた全員がまた生を受けるとはねえ。 代わりに僕は虫みたいに這いつくばって生きろって意味なんだろうねえ。 グフ…フフ…クク。 これには地獄もビックリかもしれないなあ」


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