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マッチ売りの少女と死神さん

第12章 エピローグ



ボロ布を纏った背の高い男はホーリーとだけ名乗り、ある日、大きな犬を伴ってひょっこりと現れ、彼らと生活を共にするようになった。

身障者である彼のような存在は、こんな中でも厄介者として扱われるのが常である。
しかしホーリーという人物はいつも飄々としていた。
彼は不可解なほど物知りだったため、逆に周りからは妙なホラ吹き野郎と思われていた。

一方で、彼が飼っているらしい犬は大層賢く、主人の目となり手となって、彼に懐いて尽くしているようだった。

「おい、豪勢な馬車が通るぞ」

店のゴミを漁りに大通りへ出ていた男が路地へと入ってくる。

「小銭ぐらいくんねえかな。 おい、ホーリー。 お前来いよ。 見た目でなんか恵んでくれるかも知んねえだろ」

「こないだみたいに気色わりいって石投げられんのがオチじゃね?」

ゲラゲラ笑われ、犬の表情が険しくなったのを見て言い出しっぺが肩をすくめる。

「いいんだよお、カリヌ。 気にしちゃいない」

ホーリーは彼に優しく声を掛けた。
クウンとひと言鳴いた犬が、彼の傍へと寄り添う。

「るせえな。 いいから、行けよ!」

他の男に背中を突き飛ばされたホーリーが通りに飛び出した。


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