テキストサイズ

マッチ売りの少女と死神さん

第3章 1月1日…死神さんに注がれています


あらためて、口許を固く引き締めたサラがメニューを開く。
それから文字を注意深く目で追いながら、ふと、彼女の頭に家にいるお父さんのことが浮かんだ。

「ホーリーさん。 私、この後に外出したいのですけど」

「もちろんダメだよお。 今は危険だから」

間を置かずに彼から返答があった。
ホーリーはサラから視線を外して外を見ている。
呑気に頬杖をついていた。

「危険……? また帰って来ますから。 ちょっとだけでいいんです。 家に」

「僕さあ。 もうこの話、したくないなあ?」

「………」

言葉使いはゆったりしていて柔らかくとも、彼から圧力のようなものを感じた。

(この人は………自分がどこへ行ってもどこからともなく私の目の前に現れた人だわ)

自分のことを何でも知っている。
奇跡の力を持っている。

(………もしも彼の言う通りにしなかったら?)

サラは今でもふわふわと夢の中にいるようだった。
しばらくの無言ののち、サラは別の方向からホーリーに質問をしてみる。

「ホーリーさん。 私はこの先も、いつか近いうちに死んでしまう、そうなんですか?」

「多分ねえ。 そもそも、死に近い人間しか、僕のことは見えないから………昨晩のオッサンも…ほら、僕に絡んできた男。 あれももってあと数日ってとこかなあ。 頭にね、影があったんだよね」

自らの額の辺りを指しながら、ホーリーがあっさりと言うので、サラは返す言葉が見付からなかった。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ