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マッチ売りの少女と死神さん

第1章 プロローグ


生まれてから長い時の間に少年は学習した。

宝玉の世界のこと、自分が今いる世界のこと。
過去や未来、自分に出来ること。

そして自分が何者であるか。
この少女のこと。

「こんな調子で君は死んじゃうんだよお。 かわいいのに可哀想だねえ……」

少年は笑いながら、父親の罵声と少女の悲鳴にうっとりと聴き入っていた。

「君は良い子だから、天国に行くんだよねえ? そしたらもう、会えないのかなああ」

首を傾げようとした少年が体ごと傾き、不服そうに眉を顰めて映像を変えた。

「天国でも地獄でもないここに、来てくれないかなあ。 死神の僕と一緒にいてくれたらなあ ……ま、無理だけどさ」

今度は玉には炎の中で焼け苦しむ人々が映っていた。
断末魔の叫びはうるさいばかりで、少年はつまらなそうにそれを観ていたが、

「あ、そうだ」

何かを思い付いたように眉をあげる。

「天国はすぐに生まれ変わってしまうから。 地獄なら、これからも観れるよねえ? 君に会えるよね。 そしたら君が悪い子になればいいんだよねええ?」

彼はそう考え付き、また何年かかけて、少女に会いに行く準備を進めた。



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